例えば、「同じくらい」頑張っている人間が複数居たとしても
そこには残酷なまでに差が出てしまうのが現実です
報われない努力は存在し、
才能で努力を一蹴される事も日常茶飯事なんですよね
俺が欲しかったもの
どうしても手にしたかったもの
どちらも同じくらい頑張っているのに
何故だか俺の欲しかったものは全部あいつの元にいってしまったよ
どうしても届かない想い
どうしても越えられない壁、
そこに付随する“悔しさ”と“憎しみ”にも似た「何か」
そういうものを、そういう事を・・・掬いあげているのが本作「群青にサイレン」なんだと思います。
本作が一際輝いて見えるのはそういう人の持つ「醜い」感情をストレートに描いているからなんじゃないか、と感じます
昨今の作品は聖人めいた“良い人”が横行する作品が多いと思いますが(特にアニメなんかを見てると)
でも、人の持つ感情ってそんなキラキラした良い感情ばっかりな訳がない
醜い部分なんてそりゃもういっぱいあるし
持ち切れない悲しみや憎しみだってないほうがおかしい
別にそれらを否定するつもりなんて全然ないですし、そういう描かれ方も必要と言えば必要だとは思います
ただ、それだけじゃ物足りないし、それだけじゃ救われない、とも思う。それが人の感情の全てではないですから。
そういう「かゆい所に手が届く」的なエッセンスを十二分に感じられるのが本作であり
また、本作は最新号で表紙巻頭を飾ってたんですが
きっと「こういう事を描いて欲しいな」って層も一定数居たんじゃないかなあ、ってそれを見ててふと感じてしまいました
主人公の修二は有り体な「良い人」ではないけれど、彼の抱えるペーソスにはある意味「良い人」以上に共感出来る部分があります
そういった意味ではその人らしい醜さ、滑稽さに“いとおしさ”すら感じられるキャラクターですね俺にとって
彼の「これから」にも
空の「これから」にも注目したいですし、
一応野球漫画ではありますが、そういった人間関係と
その着地のさせ方、過程などがすごく気になってしまう
題材や設定なんかよりも「キャラ」に主軸を置いている正しい漫画だと思いました
正直、思ってた以上に最高だったんでこの感想で興味を持ってくれたら是非是非、って所ですね
別に大衆向けではない(と、思う)、且つ爽やかとは程遠い作風ですけど好きな人はとことん好き、そんな新作かなと。
個人的には、近年の作品で彼女が描いていた人間のペーソス的なカットは掲載誌的に全く評価されなく
いちファンとして不本意な気持ちが大きかったので、それが表現出来る、許される場所で思いっ切り描いて欲しい
面白いと思う、素敵だと思える基準や価値観は決して一緒じゃないし、そこを統一してはならない。
そんな風に思うので、是非精一杯先生のお好きなように最後まで描いて欲しいですね。傑作の匂いがプンプンする1巻でした。
あと、個人的に感心したのが
玄石vs丈陽学園の初回とか最終回のスコアですね
俺は高校野球も好きで千葉県の地方予選も観に行ったりするんですが、
意外とあんなもんなんですよ(笑
今秋も千葉県屈指の強豪で数年前甲子園ベスト8、今夏は県で準優勝を果たした習志野が部員16人、しかも進学校の稲毛に負けちゃったりと
強豪校でも割とあんな風に、特に出だしと終わりでもたつく事はある意味茶飯事なんですよね
しかも丈陽学園は決してフルメンバーではないですし、そういうところもリアルで上手いな、って思いました
野球漫画としてもしっかり絵が描けてて、(野球漫画に相応しい絵が、という意味)
尚且つ試合の展開も面白味のある内容になっていると思うので
そっち方面の期待にも応えられるかと思います
特に、
マシンガン継投で大してアウトも取れずにすぐ降板するピッチャーなんてすっごく生々しくて最高だなあ、と(笑
こういう描写を、しかも主人公サイドで描けるなんて!女性誌の自由さとそれを受け入れてくれる寛容さに乾杯、ですね
ぶっちゃけいつも勝ってるだけじゃつまんないし、こっちゃボロ負けして哀愁感じてるところも見たいんだよ!!って常に感じてたので
そういった意味でも玄石vs丈陽学園戦は面白かったですし、常に勝つことが義務付けられる少年誌などにはない良さがあったかなあ、と思います(しかも序盤だし)
ただ、空という(ピッチャーとしての)希望も生まれましたし、
最後には驚きのコンバートもあったりするので
意外と弱小の玄石でもワンチャンありそうかなあ~って思えるその絶妙な塩梅もまた見事でした
そういった展望も含めて今後も楽しんで行きたい作品ですね 角ヶ谷くんの複線も気になりますしね。
そんな訳で、久々に河下水希さんの漫画で推せる作品に仕上がっててとても嬉しいです
まあ今作は桃栗みかんとしての発表ですけどね(笑
でも、学生時代桃栗みかんの漫画も読んでたんで。未だに単行本持ってるんで。
そういった意味でも嬉しい新作です。例えば「いちご100%」に於ける(人の感情の)ダークな部分とかを好だった方にも是非読んでもらいたい
勿論ほぼヒロインは登場せず(おまけ程度)、サービスシーンもゼロで、登場人物はほぼほぼ男子と完全に方向性は違いますが
でもこのクオリティだったらきちんと受け入れてもらえるんじゃないかなあ、って気はします
試合のラスト、真っ白なグラウンドが一気にブラックアウトしていく演出にはゾクッとするくらいの迫力がありました。感じて欲しい。
しかし、修二と空の関係性はややBL的でもありますね(笑
そういった意味合いでも「桃栗みかん」復活という事なんでしょうか。
まあでも空くん女の子っぽくもある中性的な顔立ちなんで、
むしろある意味男の娘なんで(爆)
男性が読んでも嫌悪感とかはないかな
それは桃栗みかん河下水希ファンのバイアス、という事ではなく、普通に、ね。
特に空くんの方はきっとこれ修二くんLOVEなんじゃないかなあ、、、っていう風にも取れる塩梅もまた見事
というか、色々とオイシイなあ。。と(笑